シェイクスピアのソネット

小田島雄志訳 文春文庫(07.3.10)

 

訳本はいくつもあるけれど、こちらがシェイクスピア戯曲の個人初完訳者による翻訳だと云ふ点は特筆すべきであろう。

また、この訳書は見開きに必ず銅版画がワンポイント配置してあるのだが、制作者の山本容子さんはそもそもこの本が生まれるきっかけを与えた人らしく、そのくだりはその場に居合わせた松村さんによる解説に詳しい。

 

訳文は散文調なので、さらっと読んで内容を把握したい人に向いている。

それに、各章ごとに座している銅版画が行間にあふれる詩情を補完してくれるから、意味の理解へ邁進する頭脳に気分転換となるのではないだろうか。

最後に、以下一行挙げておく。98章の冒頭です。

あなたから離れているあいだ、

季節は春でした。

(M.ウェストマコット名義によるA.クリスティの「春にして君を離れ」というタイトルはこちらから採られています)